ビッグデータ・コネクト

 

ビッグデータ・コネクト (文春文庫)

ビッグデータ・コネクト (文春文庫)

 

今年読んだ小説で一番ハラハラし、一気読みした作品。

それが藤井太洋さんの「ビッグデータ・コネクト」である。

 

去年2作目であるオービタル・クラウドを見かけ購入(丁装が綺麗だったので目につく)、今年に3作目のアンダーグラウンド・マーケットを読み、本作で3冊目。

すっかり著者の描くSFミステリーに魅了されました。

 

本作は著者初の警察小説です。IT技術者が拉致監禁される事件が主軸となっています。

前作までは現実味が薄い近未来のSF小説のようなテイストですが、警察組織などの細かい描写のおかげでぐっと実感が湧く内容になっています。

 

また、題材としてコンピューターウイルスに始まり、個人情報の漏洩、マイナンバー制度による個人情報とビッグデータの接続、Nシステムや監視カメラによる顔紋認証など、なにかと世間を賑わせているテーマを扱っています。

(なにより、「SE」という職業の現実を目の当たりにして驚愕しました…)

 

そのため、ITになじみのない方でも、普段からニュースで聞きなれたワードが多いので楽しめるストーリーとなっています。

むしろ、個人情報を満載したスマホを誰でも持ち歩く時代になったからこそ、情報という目に見えない財産を悪意ある外敵から守り抜くためにも、ITに関心のない方やよくわからないけどITデバイスを使用している方にこそ読んでいただきたい一冊。

 

本作を読むと、いかに自分が情報社会という大海原に無防備で放り出されているのかが再認識できます。

 

しかし、「情報」は物体のように手で触れることのできるものではないため、ありがたみというかその存在自体を軽視しがち。

私自身も、ネットショップで商品を買うときにウェブサイト上に個人情報を登録しますが、はたして今までにいくつのサイトに個人情報を晒してきたことか。当然、中には1回利用したっきりになっている登録サイトもあるはず。

 

むしろ、ウェブで何かしらのサービスを享受するのに個人情報を入力するのが当たり前みたいに思っていたので、最近では氏名等を登録するのが苦にならなくなってきたレベル。

 

来年からはマイナンバー制度も始まりますが、肝心の発行元である国ですら情報を管理できない時代です。

 

それにIoTが加速し、本作のように、ありとあらゆる物・情報がデータ接続され繋がっていくことに。冷静になって考えると、それはとても恐ろしいことのように思えます。

いかに個人レベルでセキュリティに関心を持ち、適切な情報管理をしていくかが問われますね。

  

そういえば、昔読んだ村上龍希望の国のエクソダス (文春文庫)」の作中で、アルゴリズムを学ぶのは13歳頃がピークである!っていう一文を思い出しました。

これからの時代、早いうちからの情報教育は、ひょっとすると言語学習なんかよりも重要なのかもしれませんね。