『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』を読みました

 

 

2016年14冊目。

 

学生の頃に「スプートニクの恋人 (講談社文庫)」(なぜこれを読んだのかは思い出せない)を読んで以来なので久々の村上ワールドです。

 

毎年、ノーベル賞の時期になると持て囃される作家だけあって世界中にファンがいるようです。わたしも村上春樹の作品は比較的好きな方ですが、人気ゆえにAmazonのレビューを見ると苛烈な意見も書かれています。村上作品を何作か読んだことのある方ならわかると思いますが、彼の作品はある特徴が多くみられます(そのためどの作品も似たように感じることも…)。

 

それらの特徴を知っていて抵抗がなければ読めばいいし、嫌いなら読まなければいいこと。わたしは比較的好きな方だけど信者ではないので、以前「1Q84 BOOK1〈4月‐6月〉前編 (新潮文庫)」を勢いで買ったはいいけど20ページくらいで読むのを辞めたことがあります。「アフターダーク (講談社文庫)」もしんどかった記憶が。

 

 

あらすじ

「多崎つくる、鉄道の駅をつくるのが仕事。名古屋での高校時代、四人の男女の親友と完璧な調和を成す関係を結んでいたが、大学時代のある日突然、四人から絶縁を申し渡された。何の理由も告げられずに――。

死の淵を一時さ迷い、漂うように生きてきたつくるは、新しい年上の恋人・沙羅に促され、あの時なにが起きたのか探り始めるのだった。」

 

過去の友人たちを訪ねていく(≒巡礼する)ストーリーですが、登場人物全員が村上ワールド全開でものすごく知的な会話を繰り広げています。わたしの中で村上作品は「メタファーを楽しむ作品である」という理解があるため、その多彩な表現を楽しむという側面からすると、とても優れているのではないかと感心。

 

あと、彼の作中に登場する「音楽」がわたしは毎回気になっています。

例えば、本作のタイトルにもなっているフランツ・リストの「ル・マル・デュ・ペイ」。「巡礼の年」という曲集の第一年、スイスの巻に入っているそうです。


リスト:《巡礼の年 第1年スイス》 S 160 8 郷愁 ル・マル・デュ・ペイ

 

読了後にyoutubeで聴きましたが、本作を読むことがなければこんな音楽があることを知る機会はなかったでしょう。音楽にも好き嫌いがあるので、中には「ふーん」とだけで終わってしまうものもありますが、「音楽」が彼の作品に深みを加えている事は事実。

 

ストーリー自体も大きな転換があるわけでもないので、最初から最後までスーッと平行線のように終わっていくイメージですが、それも彼の作品ではよくある事。万人受けする作品ではないでしょうが、わたしは嫌いではなかったです。