カミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズ完結『傷だらけのカミーユ』

2014年、国内で数々の賞を受賞し瞬く間に有名となったピエール・ルメートルの『その女アレックス』。

 

本作『傷だらけのカミーユ』はシリーズ3作目にして、シリーズ最後の長編となります。

傷だらけのカミーユ (文春文庫) (文春文庫 ル 6-4)

傷だらけのカミーユ (文春文庫) (文春文庫 ル 6-4)

 

 

前作の書評はこちら

hayatooovsneko.hatenablog.com

  

カミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズを時系列順に挙げると、以下の順となるため、未読の方はこの順番に読むことをオススメします(実際の販売順は翻訳の関係で『その女アレックス』が1番最初に発売されました)。

1.悲しみのイレーヌ (文春文庫 ル 6-3)

2.その女アレックス (文春文庫) 

3.傷だらけのカミーユ (文春文庫) (文春文庫 ル 6-4)

 

『悲しみのイレーヌ』と『その女アレックス』が世間から大きく注目された作品であったため、読者の本作に対する期待は相当大きなものだったのでしょう。本作読了後にAmazonレビューを見ると批判的な内容が多く、それはある意味、本シリーズの人気の高さを物語っているんだなーと思いました。

 

たしかに、事件の意外性(終盤での大どんでん返し的な)という面からみると、本作は前2作に比べるとやや物足りない気もします。ただし、3部作全体をカミーユ・ヴェルーヴェンという一個人の壮絶な(悲劇的な、とも言える)ストーリーと捉えて考えてみると、本作での収束は非常に収まりがいい出来だったのではないだろーかと思いました。カミーユ・ヴェルーヴェンは『悲しみのイレーヌ』でどん底に落とされ、『その女アレックス』で人間としても警官としても立ち直り、『傷だらけのカミーユ』で新たな一歩を踏み出せたかと思いきや…。

 

本シリーズに出会うまで、フランスミステリを読んだことがありませんでした。

そのため、フランス文学が全てそうなのか知りませんが、会話のところどころに登場する教養としての美術の話題(さすが、芸術の都・パリ)や、日本人とは大きく異なるフランス人の感覚・思考など、全てが新鮮で国内ミステリにはない雰囲気を堪能することができました。

 

今のところ、カミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズの長編は3部作で終わりとのことですが、日本語未翻訳の中編がまだ2作あるとあとがきに書かれていたため、再度カミーユ・ヴェルーヴェン警部の活躍っぷりを見ることができるかもしれません。

 世界的にも人気を博した本シリーズ、ファンとしては新たな長編が執筆されることを望みます。